2007年07月22日

複数案を提示する場合としない場合

 先日レビューした検討資料の中に、実現案を提示するテーマが2つあった。それぞれに実現案が複数書いてあったので、「1つめのテーマに対してはセキュリティという視点が漏れている、2つめのテーマに対してはこのケースでは複数の実現案を提示する必要はない」とコメントして修正を依頼した。
 するとその修正された資料は、なぜか両方のテーマとも実現案が1つになっていた。そのことを本人に確認すると、コメントを見て「セキュリティが一番重要」と思い込んでセキュリティ観点を重視した案に絞ったのだという。
 つまり、この資料を作った本人は、複数の実現案を提示する必要性の有無の判断基準を持っていないことが分かったのである。

 要件定義において、どんな場合に複数の実現案を提示すべきで、どんな場合に単一案でよいのだろう?

 要件定義の目的は、「後に続く設計工程で発生するブレを抑える」ことにある。
 したがって、複数案を提示すべきものは、「どの実現案を採用するかが後工程に大きく影響するもの、すなわち、複数の実現案の間で開発規模や機能性などの差が大きいもの」ということになる。言い換えると、どちらの案でも開発規模や機能性などにあまり違いがないものは複数案を提示する必要がないといえる。それは、後工程で決定すればよい話である。

 では、これらの案をどのように顧客に提示すればよいのだろうか?

 顧客は提示された複数案を評価し、どの案を採用するかを判断する必要がある。判断するための観点は複数存在するが、どの観点をどれだけ重視するかによってどの案を採用するかが決まる。が、それは、顧客でなければ判断できない。したがって、複数案の検討資料は顧客が速やかにその判断を行えるものでなければならない。

 そのためには、それぞれの案の概要と共に、それぞれの案に対する複数の比較観点と各観点での評価(メリット・デメリットや開発規模など)を比較しやすい形で提示する必要がある。
 また、複数案が存在するということは、すべての観点において特定の案が最適であるということはまずないはずである。
 もし、複数案の比較結果がそうなっているのであれば、それは比較観点が漏れているということを意味するので、漏れている比較観点を見つけて追記することが必要である。

 要するに、要件定義における複数案の検討資料の顧客価値は、「後工程への影響が大きい開発規模や機能性などの差が大きい複数の実現案の中から、顧客にとっての最適な案を、顧客自身がどれだけ短時間で選べるようになっているか」で決まるのである。
posted by koppe at 10:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 要件定義の現場から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/48851992

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。